作り手の心意気を見える化する心意気デザイン

心意気コラム

公開日:2024.12.27

最終更新日:2024.12.27

《心意気インタビュー》株式会社tree 金田江里子さん

《心意気インタビュー》株式会社tree 金田江里子さん

《心意気インタビュー》株式会社tree 金田江里子さん

心意気インタビューとは、地域の「ヒト・モノ・コト」の心意気を発見していくコンテンツ。

今回の取材先は株式会社tree 金田江里子さん。

「米沢で遊ぼう!学ぼう!元気になろう!」をコンセプトに立ち上げられた『ざいご太郎塾』。米沢品質アワード2024を受賞し、その存在感がより一層高まった取り組み。まだ秘められた魅力がたくさんある『ざいご太郎塾』の活動内容やAWARD受賞の感想などを代表の金田さんにインタビューしてみました。

金田江里子さんへのインタビュー

「ざいご太郎」とはどういう意味ですか?

「ざいご太郎」という言葉は、この辺の田舎の方言です。標準語の在郷が訛った「ざいご」は田舎という意味で、昔から地元の会話の中で「お前ざいご太郎だな」という田舎者を馬鹿にする言葉として使われていました。

だけど、「ざいご太郎」っていう言葉を知っているということは、その人もまた田舎者なんです。知らなければ「ざいご太郎」と言われても何のことだか分かりませんから笑

田舎者が田舎者に対して馬鹿にするような言葉でもあるんですが、そこにはどっちも田舎者同士、お互いが思っているけど馬鹿にしながらも親愛の意味がある。それを田舎体験塾の名前にしてやろうと考えました。

『ざいご太郎塾』を始めようとしたきっかけがあれば教えてください

私は福祉デザインの仕事で首都圏・東京の方にほぼ毎月通っていました。田舎では専門家やプロフェッショナルの人たちと会う機会が少なく、答えは都会にあると思っていました。実際、都会で得るものは多かったです。10年以上そんな生活をしていたんですが、コロナをきっかけに行けなくなりました。当然リアルでは都会の人との仕事や行き来がなくなりました。地元でもイベントがなくなった影響から、仕事が一切なくなってしまいました。

元々うちの会社はtree(ツリー)という社名です。デザイン業でデジタル系の仕事をしながらも、最終的にはネイチャー系の仕事をしたいと会社を作った頃から思っていました。“せっかくの機会だから”と。コロナの期間中はよく野山を駆け巡りました。そういう仲間たちとの出会いが沢山あったことから、コロナの“ステイ米沢”期間は宝物であり、もう一回自分の仕事を見つめ直せるいい時間でした。

米沢(いなか)に抱いていたネガティブなイメージ、不便で何もない、娯楽施設もない。もう本当につまんない。そんなイメージから一転、「楽しいこといっぱいあるじゃん!」と気づきました。

都会ではできないこと、できない体験、都会にはないものを文化と歴史も含め、自分の中に「これってすごいことだよね、面白いよね」という考えが生まれました。

その頃、私がやってることをFacebookやSNSで見た都会の知人・友達がみんな「すごくうらやましい!」と言ってきました。「じゃあ来ればいいのに…」と思っていましたが、来ればいいんじゃなくて、呼べばいいんだと考えるようになりました。

自分も楽しいし、これからの米沢の観光にとってもすごくいい材料になるんじゃないかと色々企画を始めました。米沢では普通と思っていたものが、実は全国的にもここでしかやっていなかった。そういうもの・ことを見つけて、不便を楽しむことがいかに大事かということにも気づきました。

例えば、縄を編んで、しめ飾りを作る。そういった四季折々の行事、米沢にしかないような観光プログラムを地元の人も含め都会の人に紹介したいと『ざいご太郎塾』を立ち上げました。

ちょうどコロナの時期に米沢市が開催していた企画塾。『TEAM NEXT YONEZAWA』の前身のようなものがありました。そこで「こんなことしたら面白いよな」と提案したところ、賛同してくれた仲間がいて、架空の話がいつの間にか現実になっていました。

ツアーや体験教室を他所のイベントとどう差別化していますか?

都会の方が米沢らしさ、独自性に興味を持って来てくださいます。訪れた方が「米沢楽しかったよ」と言ってくださって、そのまたお友達にもどんどん米沢に来てもらえたら嬉しいですよね。

私が友達を案内するのならば、あえて神社仏閣は案内しません。なぜなら、自分のお殿様は決まっていますから。もちろん、上杉鷹山の教えや藩政を学ぶことは大切なことです。誰もが行くようなスタンダードな旅行コースは、他の方にお任せします。

だからこそ、他の人がびっくりするような、ここでしか行けないところへ行ったり、アクティビティを行ったりして、「えっスゴイ!」て驚いてもらえることがすごく嬉しいです。

ターゲットにしている年齢層はありますか?
『ざいご太郎塾』がターゲットにしている方はどんな人を想定していますか?

ターゲットとしては主に中高年の方々です。長い人生を歩み、価値のわかる人に来てもらいたいからです。参加費が高いか安いかは、その人の価値観によると思います。最初のうちは、金額設定に悩まされました。

地元の人にとっては、当たり前のことにお金を出す感覚はありません。それでも、都会から来た人は「この設定金額じゃ安いよね」と言ってくれたんです。

「米沢にくるとこんなに楽しいことできるんだ」って思ってくれる人だけを呼べばいい。イベントのクオリティーを下げてまで値段を落としたところで、その人が楽しいかといったら、全然違うと思います。そのイベントの価値観をちゃんと分かってくれる人に来て欲しいと思うんです。

だから、大型バスでドンと来て、安くて美味しいものをみんなで食べるような薄利多売のツアーはもう終わりです。私が組むなら、ジャンボタクシー1台で完結するような、来た人みんなが主役になれる旅にたいと思います。じゃないと楽しめないですよね。

旅の終わりに利用客さんはお土産も沢山買っていってくれるんです。地元のものを買っていってくださるし、その後帰ってからも注文をくださる。米沢観光からまた繋がっていることが、すごくありがたいですよ。

どんな内容のツアーを行っていますか?具体的な例を教えてください

人気は、自分達で山へ山菜を採りに行き、それを料理するツアーです。山菜名人・プロがいて、そういう師匠に付いて行って山菜を勉強しながら採りに行くのも楽しいですよ。でも、危険な場所には観光客を連れて行けませんからね。厳しいところには、お連れしません。旅行するうえでのリスク管理はすごく大事で、不安がある場合は中止もあります。

ざいご太郎塾のツアーではそんな不便なことを学ぶ中で今の便利さに感謝できます。米沢の良さも伝わります。

体験を通して参加者には何を感じてほしいですか?

根底にあるのは「米沢に来て、心も体も元気になってほしい」ということです。みなさんストレスを抱えて生きているので。

旅の最中、森の中を歩くと、毛細血管の先まで綺麗な空気が行き渡るのを感じます。森を歩くってすごく気持ちがいいんですよね。

首都圏では、車の通る音や機械音が多いですから、ぜひゆったり出来る土地に来て、不便と自然を体験してもらって、良さを知ってもらいたいです。現実社会と遮断できるみたいな。現実からやっと離れられるみたいな感じ。浦島太郎ではないですが、すごく落ち着くいい時空間。

都会ですごいレストランに連れて行ってもらって、高いワインとか美味しい料理を食べるのも、それはそれで田舎者にとってはすごい体験なんだけど、真逆なんですよね。真逆の幸せというか。どちらでもいいんでしょうけど。

私にとっては、自然の中での何にも縛られない時空間がすごく快適なので、それをいろんな人に体感してもらいたいと思います。

インタビュー前に話していた福祉関係のお仕事について

コミュニケーション絵本を神奈川県のバックアップで作っていて、現在、米沢市役所の受付にも置いてていただいています。その繋がりの人達とは20年経った今も関係が続いています。

絵本の繋がりから認知症情動療法の本を書いた東北大の先生とも繋がって、認知症に関する非薬物療法の研究にも参加させていただいております。

コロナによる“ステイ米沢”の時期が今、やっとほぐれてはじけて、いろんな人たちと繋がっています。これまで福祉系の仕事や福祉デザインの仕事をしていたこともあり、障害や病と共に生きる人達と知り合いました。

そこでもみんな「米沢に遊びに行きたい」って言ってくれます。旅は心のリハビリ。そこに差別はないです。病気や障害があっても旅行には行きたいし、温泉にも入りたい、温浴療法によって体も良くなるかも。こっちに来て、ヘルシーな山菜などを食べる。健康的な旅行です。

米沢品質アワードを受賞されてから新たな変化は起きましたか?

自然や米沢の暮らしを知りたい人や、健康志向の観光を求める人達から問い合わせをもらっています。温泉も、“かてもの”もそうです。そういうものを是非食べてみたいと。

いろんなことを仕事にして、全てバラバラなことをしてるように見えていても、私の中では全部繋がっています。そういう意味では、健康になるために医者にかかったり、高い薬を飲むとかではなく、本当に心から健康になるためには、楽しい体験や自然の中で体をリフレッシュすることがどれだけ心と身体にいいか。米沢だからできる、ものやことが色々揃っていると思います。

今後どうなるかはまだ分からないですが、この間東京へ行った際そんな話で盛り上がって。「じゃあ次のイベント米沢でしましょう」という話になりました。

今までの観光スタイルとはちょっと違う、でも違った方がいいんです。多様性の時代ですから!何かに特化したものがいろんな人の目に留まって、その価値観がわかる人達が来てくれる方がこれからの米沢には、いいんじゃないかなと思います。お金をたくさん使い、大酒飲んでどんちゃん騒ぎ。もうそんな時代は終わりました。そういう時代も過ごしてきたから言えるのかもしれないけど。

これから新しく始めようとしていることはありますか?

今やってること自体がまだ発展途上なので、基本どうやってそれを持続可能な事業にしていくかというのが一番の問題です。

取材を終えて 金田江里子さんの心意気とは

不便な田舎だからおもしろい

田舎だからこその不便さを逆手に取った金田さん。都会では味わえない米沢ならではの体験を通してみんなに元気になってもらいたいと話します。

『ざいご太郎塾』は今後、地元だけでなく都会に暮らす人達にも元気を届ける、そんなあたたかいブランドになっていく気がしました。

このコラムを書いた人
岡部

この度縁あって入社しました新人の岡部です。入社前までは、仙台の専門学校でグラフィックデザインを学んでいました。入社後は、より専門的なデザインのことや印刷のことを学ぶことが出来て楽しいです。学び得た一つ一つの感覚を皆さんのデザインに活かせるよう勉強していきます。働く中で米沢の更なる魅力を探り、会社で掲げているビジョン「心意気あふれた魅力的なまちづくり」に貢献したいと考えております。よろしくお願いします。

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