心意気インタビューとは、地域の「ヒト・モノ・コト」の心意気を発見していくコンテンツ。今回の取材先は、株式会社上杉コーポレーションの渡邉直彦(わたなべなおひこ)さんです。
株式会社上杉コーポレーションは、米沢の観光物産施設「上杉城史苑」を運営する第3セクターです。上杉城史苑で大切にしている想いやこれからの展望を渡邉直彦さんにお伺いしました。
この記事で読めること
渡邉直彦さんへインタビュー
上杉城史苑について教えてください。
上杉神社のお膝元という立地を活かした観光物産施設です。1992年、山形新幹線の開業と「べにばな国体」夏季大会(米沢開催)に合わせて、上杉城史苑はオープンしました。今年で34年目を迎えます。同じ年には米沢駅の新駅舎完成や、喜多方・会津若松へつながる国道121号線・大峠の開通もあり、まさに山形新幹線と同級生の施設です。

国道沿いの道の駅や観光センターのようなロードサイド型ではなく、上杉神社や伝国の杜を目的に訪れる方々を主なお客様とする「目的地型施設」として営業しています。
そのため、米沢・置賜の商品を紹介・販売するだけでなく、上杉文化や上杉の武将に根ざした商品づくりが重要だと考え、これまで多くの商品開発やメーカーとの協業を行ってきました。
上杉城史苑が大切にしていることはなんですか。
私たちの一番の使命は、お客様に感動していただくことです。
お土産を扱う小売業と、レストランを運営する飲食業、その両面でご利用いただくお客様に期待以上のサービスとおもてなしを届けることを大切にしています。そうした体験を通して、米沢や上杉城史苑のファンになっていただき、交流人口を増やすことで、人口減少が進む米沢のまち全体を元気にしていく。
この想いは、1992年の創業当時から変わらない会社のポリシーとして、社員一同で取り組んでいます。

また、「味・技・心」という三つの漢字一文字の想いも大切にしています。
「味」は、米沢牛や郷土料理など、米沢ならではの食の魅力を多くの方に知っていただくこと。
「技」は、笹野一刀彫や米沢織、焼き物など、長く受け継がれてきた職人の技や伝統工芸を伝えること。
「心」は、米沢のおもてなしの心や、「愛と義のまち米沢」に象徴される精神性を大切にし、その心意気をお客様に届けることです。
さらに、創業当時から「旅のキーステーション」という言葉も大切にしてきました。上杉神社のすぐそばという立地を活かし、米沢観光の拠点として、ここから米沢のさまざまな魅力を巡ってほしいという想いを込めています。
「味・技・心」と「旅のキーステーション」は、1992年の創業以来、上杉城史苑のコピーとして使い続けている言葉です。
お客様からはどんな反応を頂くことが多いですか。
接客サービス業に携わる中で、私たちにとって一番の喜びは、お客様からの言葉です。
飲食部門では「おいしかった」「また来るよ」と言っていただくこと。
お土産売り場では「おいしかったからまた買いに来た」「人に自信をもって勧められる米沢の商品だね」と言っていただくことが、何よりの励みになっています。
そうした声に応えるため、商品開発や販売に力を入れ、日々学びながら情報を取り入れ、より良いものを届けることを私たちの使命として営業しています。

ありがたいことに、市外・県外からのお客様にも多くご利用いただいています。
県外からの観光のお客様は、米沢を訪れた旅の思い出としてお土産を購入してくださり、一方で米沢の方が市外へ出かける際の「米沢のお土産」を選ぶ場としても、当社をご利用いただいています。
飲食部門では、観光客のランチ利用に加え、ご法事やお祝い事など、人生の節目となる場面での会食に多く選ばれています。
また、夜の宴会も多く、春のお花見、秋の芋煮会、忘新年会など、地元のお客様にも幅広くご利用いただいています。
割合としては、観光のお客様が約7割、地元のお客様が約3割ですが、年々地元のお客様の利用は増えてきていると感じています。明確にお住まいを伺っているわけではありませんが、日々の接客を通じた実感として、地元の方との関わりが深まってきていると捉えています。
米沢の方が東京などへ行く際、「何を持って行けば喜んでもらえるか」と考えたときに、品ぞろえの豊富さから当社を利用していただくことが多く、地域の百貨店のような存在として親しまれています。
そのため、常に同じ商品を並べるのではなく、上杉城史苑ならではの新しい商品を提案し、選ぶ楽しさも含めて提供していくことが、私たちの大切な役割だと考えています。
上杉城史苑が選ばれ続けるために意識しているところはありますか。
「味・技・心」の中でも、特に大切にしているのが「心」です。
AIやITが進み、無人化やキャッシュレスなど効率化が進む時代ですが、私たちは最終的には人と人との関わりが何より大事だと考えています。
観光は、その土地の人と話し、勧めてもらったものを味わい、購入する体験そのものが旅の思い出になります。機械に頼る部分は取り入れつつも、観光業だからこそ、お客様との会話や対面でのおもてなしを大切にしていきたいと考えています。
効率性だけを追い求めるのではなく、あえてアナログな良さを残すこと。それこそが今の時代だからこそ改めて評価され、これからも上杉城史苑が大切にし続けていく姿勢です。
また、同時に商品力でもお客様に選んでいただきたいという想いを強く持っています。
2023年に打ち出した「米沢サムライビール」はその一つの例で、「上杉城史苑に行かないと買えない・食べられない・体験できない」商品や体験を追い求めてきました。そうした“ここに来る理由”となる商品や企画をさらに磨き、お客様に提案し続けることが、城史苑そのものを選んでいただく理由につながると考えています。
「米沢サムライビール」を開発した経緯を教えてください。

「米沢サムライビール」という名前には、インバウンド需要を意識した狙いがあります。
2023年の発売当時はコロナ禍明けを見据え、今後確実に増えていくであろう海外からのお客様に向けて、日本を象徴する存在として「侍」という言葉に着目しました。
日本と聞いて多くの人が連想する“侍”は、インバウンドにとって強い訴求力を持つキラーコンテンツです。その象徴的なワードを商品名に取り入れることで、より多くの方に興味を持ってもらいたいと考えました。
発売以来、多くの支持をいただき、米沢市のふるさと納税にも採用されています。
本来は現地・米沢で味わっていただきたい商品ですが、来訪が難しい方にも手に取っていただける機会が広がったことを、嬉しく感じています。

これから力を入れていきたいことを教えてください。
直近の目標は、2030年に迎える上杉謙信公生誕500年という大きな節目に向けて、上杉に関連した商品を数多く制作し、米沢や上杉の魅力をより多くの人に発信していくことです。
さらに長い視点では、人口減少が進む中で、まちをどう元気にしていくかという課題があります。定住人口の増加が理想ではありますが、すぐに実現できるものではないからこそ、まずは交流人口を増やすことが重要だと考えています。
旅行や気軽なお出かけをきっかけに米沢を訪れてもらい、食べて、飲んで、泊まってもらう。
そうした人の流れを生み出すことで、米沢全体の活力につなげていく。その一端を担う存在として、これからも賑わいのあるまちづくりに貢献していきたいと考えています。
米沢やお客様にとって、どのような存在でありたいですか?
自分たちの存在を改めて意識することは多くありませんが、何よりも「選ばれ続けるお店」でありたいと考えています。
10年、20年と商いを続けていく中で、時代やお客様のニーズは変わっていきます。その中で選び続けてもらうことは、決して簡単なことではありません。
飲食と小売、どちらも手がけていますが、根底にあるのは人と人との関わりです。だからこそ、「味・技・心」の中でも、米沢の心を大切にし、「だから上杉城史苑に行きたい」と思っていただける店であり続けたいと考えています。

お土産や飲食を通して、何よりも大切にしているのは、直接「米沢を感じてもらう」ことです。商品を見て、味わい、手に取り、五感で体験してもらうこと。それこそが上杉城史苑の魅力であり、さらに磨いていくべき価値だと考えています。
「味・技・心」に集約される中でも、米沢の歴史や文化、職人の技、たとえば一刀彫を削る音までも含めて、五感で体感できる施設であり続けたい。
米沢を全身で感じてもらえることが、これからも大切にしていきたい城史苑のあり方です。その積み重ねが評価につながり、次の世代へと受け継がれていく。
100年企業を目指す中で、今その一端を担っている。そんな想いで日々向き合っています。
上杉コーポレーションの心意気とは
おもてなしの心で米沢を全国に発信中!
上杉城史苑が大切にしている「米沢の味・技・心」と「旅のキーステーション」というキーワード。そのなかでも、人と人の繋がりから生まれる「心」で選ばれたいと話す渡邉さん。
渡邉さんは漠然と「米沢から離れたくない」と感じ、上杉城史苑に入社したそうです。「米沢の風景や土地柄、そして人の温かさも含めて、都会にはない魅力がたくさんある。だからこそ、米沢ならではの良さを、観光業を通してより多くの人に伝えていきたい」とお話していたことが印象的でした。
小売業も飲食業も、接客業の本質は人と人との関わり。渡邉さんのお話を聞いているうちに、義の心を大切にしていた上杉謙信や、民や米沢を思った上杉鷹山など、上杉家が人を大切にしてきた「心」が浮かびました。

上杉家の「心」が息づく上杉神社エリアにある上杉城史苑。この場所がこれからも、「心」で選ばれる存在であり続けることを願っています。