作り手がお米を通して“世の中に伝えたい心意気”を発見するワークショップ
上杉の心を今に伝えるお米「上杉藉田米」。当初のご依頼は、お米のパッケージのリニューアルでした。
デザインに取りかかる前、クライアントから伺った「全国から選ばれるお米を目指したい」という決意。その想いを実現するためには、デザインをただ変えるだけではなく、世の中のお米選びのシーンから本質的な課題を捉え直す必要がありました。
従来、産地や品種、農法などで選ばれるお米。上杉藉田米も「米沢産」や「つや姫」、「無農薬米」を打ち出せば、世の中にたくさんあるお米の中から選ばれるようになるのでしょうか。産地で言えば、山形はもちろん新潟・北海道・秋田といった知名度のある米どころがありますし、無農薬米も今や珍しいものではなくなりました。
従来のお米の選び方ではない、上杉藉田米ならではの選ばれ方を見つけることが課題だと考え、まずは選ばれる理由の源泉(=心意気)を考えることにしました。
耳なじみのない“藉田”という言葉には、どんな意味があるのか。このお米にしかない魅力は何か。を深掘りするために、クライアントの心意気を引き出すワークショップを開催しました。
米沢稔りの会さまメンバー全員に参加していただき、上杉藉田米にかける想いを対話を繰り返して引き出します。
分かっているようで分からなかったお互いの本音。最初は、「冷めてもおいしい」「手作りの味」「土にこだわっている」などメンバーそれぞれのこだわりが出てきました。
しかし、そもそも“藉田米”と名付けた理由を紐解いていくと、少しずつ出てくる言葉に変化が現れ始めます。
・どん底でも未来を信じて生き抜く事をあきらめられない
・あきらめるな鍬を取れ!君主自ら田に入り意識改革
・誰もやらなくても自分は続けるという覚悟
・あきらめない心・折れない心 など
そもそも“籍田”とは古代中国の周の国で行われた儀礼で、君主が国内の農事を励ますため、自ら田を踏み耕し、収穫した米を祖先に備えたことから始まったものだそう。
かつて米沢藩 第9第藩主 上杉鷹山公はその故事にならい、藩財政の悪化や飢饉に見舞われ働く意欲を失いかけていた領民を励まそうと藩主自ら田んぼに入り鍬を入れ、「藉田の礼」という儀式を行いました。鷹山公の行動は農業の尊さを示すとともに、武士が農事に関わることを恥とする風潮も一新したそうで、翌年から家臣団による新田開発が始まったと伝えられています。
ワークショップを通して分かったことは、米沢稔りの会さまが、お米づくりを通して鷹山公の想いを現代に伝えるべく上杉藉田米を大切に守り続けていることでした。どんな困難に陥っても、あきらめずに未来を信じてやり抜くことの大切さを世の中に伝えたい。ソウルフードであるお米だからこそ、“精神”で選ぶという可能性を感じた瞬間でした。
どのグループからも共通して出てきた「あきらめない心」こそが、上杉藉田米の選ばれる理由であり、デザインの根拠と言えます。
上杉藉田米 パッケージデザイン
ブランド開発を通して見えてきたのは、米沢稔りの会さまが上杉藉田米を通して「あきらめずに未来を信じてやり抜くことの大切さを世の中に伝えたい」という心意気でした。
パッケージにおいて、他のお米と大きく差別化を図れる点。それは「あきらめない心が育つ」という“タグライン(メッセージ)”が一番に伝わることだと考えました。
そこで、白い紙袋に濃度が一番高い黒の文字のみで配色し、「あきらめない心が育つ」といったメッセージを商品名よりも大きく目立たせたデザインに仕上げました。
「あきらめない心が育つ」という言葉には米沢稔りの会さまの覚悟が込められています。
江戸時代に藩主だった上杉鷹山公も、当時自らの覚悟を紙に筆を用いて記していました。鷹山公の時代から伝わり、現代そして後世にも繋いでいきたいという米沢稔りの会さまの心意気がより伝わるように、書家さんに依頼し書いていただいた、力強さ感じる筆文字を起用しています。
他のお米とは一線を画く上杉藉田米の「らしさ」をぜひ多くの方々に感じていただきたいです。
日々のお仕事や勉強、大会に向けて励んでいるスポーツなど・・・。このお米とともに今をあきらめずに頑張る方々の「あきらめない心」が育っていくことを願っています。